本書は、自分にとりまいて起こるトラブルの原因を見直し、人間関係に関する多くの問題を一挙に解決できる力を秘めています。
引用:自分の小さな「箱」から脱出する方法 著者/The Arbinger Institute・ 監修者/金森 重樹
この本の前書きにこんなことが書かれています。
一挙に解決?大きく出るなぁと半分疑いながら、半分は素直にワクワク。
実際に読み終えてみて、ちょっと悔しいくらいの衝撃を受けています。「箱」から出て物事を見ているだろうか。
少し立ち止まり、自問自答するきっかけをくれた本になりました。
基本情報
書籍名 | 自分の小さな「箱」から脱出する方法 |
著者 | Arbinger Institute(アービンジャー・インスティテュート) |
発売日 | 2006年10月19日 |
出版社 | 大和書房 |
ページ数 | 265ページ |
値段 | 1,600円(税抜) |
この書籍を発売しているArbinger Instituteはトレーニング、コンサルティング、コーチングを提供している国際研究機関。
そのプログラム内容は行動学・心理学の研究&世界中の組織と一緒に積み上げてきた経験から作り上げているそう。
公式サイト アービンジャー販売書籍一覧
今回読んだ本は、Arbinger Instituteが最初に発売した書籍。「哲学者、心理学者、法律家などの学者が人間科学の本質に潜む問題について研究した結果を発表したもの」と説明されています。
いわば、人間科学のプロ集団による研究の集大成!
ですが意外なことに内容は小説形式になっていて、かなり読み易くなっています。
人間関係の中で問題が起きる「仕組み」を理解できる本
この本を一言で言うならこんな感じ。
結論を言うと、この本では人間関係の中で起きる問題はすべて「自分が「箱」に入ってしまうこと」が原因と説明しています。
「箱」とは「自分の心のありかた」と考えるのが分かりやすいかなと思います。
どういうことか?例えば、こんな人が目の前にいるのを想像してください。
・冷たく当たってくる家族
・頭ごなしに否定してくる上司
・指示しても期待通りに動かない部下
ちょっと嫌な気持ちになりますよね。相手の態度にストレスを感じると思います。
次に注目するのは、そんな人を前にした時の「自分の心のありかた」です。
・心を開いている
・自分に問題があるかもと思えている
・目の前の相手を一人の「人」として見えている
・心を閉ざしている
・自分が問題を抱えていることに気づけていない
・目の前の相手を「物」として見ている
なんとなく「箱」のイメージが湧きましたか?
もし、嫌な態度を取ってくる人に対しても、自分が「箱」の外にいれば、問題に発展しなさそう。
そんな風にイメージできますよね。
勘の良い方はここまでの説明で、「なるほど、相手の悪いところばかりを見ず、自分を顧みようってことが言いたいのかな?」と思うかもしれません。
その推察は正しいです。笑
ですが、この本の面白いところはそれだけで終わらない深さがあるところ。
・相手が「箱」に入ってる場合はどうするのか?
・「箱」から出る方法とは?
これらの仕組みを言語化しています。
それを理解すると、自分の心を正しく保つ新しい「指針」を1つ貰える、そんな本だと思います。
この本が役立ちそうなシーン
人間関係の悩み全般に役立ちますが、個人的にはこんな時に読むのがおススメ。
・先生(対生徒)
・父母(対お子さん)
・リーダー(対メンバー)など
・家族関係、夫婦関係 など
私がこの本から学んだ心のあり方
さて、先に書いた通りこの本は小説風に書かれています。
舞台は大企業で勤めるやり手のビジネスマン「トム」と、カリスマ副社長「バド」の面談。主人公のトムは面談の冒頭でいきなり、「君には問題がある」と言われてしまいます。
そしてその問題こそ、「箱」に入ってしまっていたこと。
話はトムとバドが今までの行動を例に挙げ、人が「箱」に入ってしまう仕組みを理解していくという流れなので、具体例があり想像しやすくなっています。
以下、本の一節をピックアップしながら、私が学んだことを3つまとめます。
1:相手に行動を変えてもらう必要がある時
君が一見正しい事をしたとしよう。
たとえそれが正しい事でも、箱の中にいて行った場合は非生産的な反応を引き起こす事になり、箱の外にいて行った時はまったく違う結果を招く。
というのも、人はまず相手の行動にではなく、相手のありよう、つまり相手が自分に対して「箱」の中にいるか外にいるかに対して反応するんだから。
引用:自分の小さな「箱」から脱出する方法 著者/The Arbinger Institute・ 監修者/金森 重樹
例えば部下のミスを指摘する場合。相手にとって辛い言葉を伝えなくてはならないことがあります。
その時も「箱」の中にいるか外にいるかで、同じことを伝えても相手への伝わり方が違ってきます。
「箱」の中にいる場合:
相手を「物」として捉えてしまい、目の前のミスをどう改善するかにしか目がいかない。
「箱」の外にいる場合:
相手を一人の「人」として捉えられ、厳しい内容であっても部下が聞く体勢を取れているかに配慮しながら伝えられる。また、部下への期待の気持ちなども一緒に伝えることができる。
指導することの最終ゴールは目の前のミスを正すことではなく、相手の情熱をかき立てることなのだと教えてくれる一節です。
2:相手が自分に対して協力的ではないと思ってしまう時
いったん自分の感情に背くと、すべての思考や感情が、何をしようと自分が正しい、と主張しはじめるんだ。
引用:自分の小さな「箱」から脱出する方法 著者/The Arbinger Institute・ 監修者/金森 重樹
例えば夫婦関係。
夕飯後パートナーは寝ていて、自分は台所のシンクに放置されたお皿を見つけたとします。
洗わないといけないと思っているのに洗わなかった。これが「自分の感情に背いている」状態です。
次に何が起きるか。
パートナーへの感情=「洗ってくれたらいいのに」「怠惰だな」
自分の感情=「洗おうと思ったけど疲れてる」
などという「自分の行動を正当化したいがための感情」が湧いてきます。
その結果何が起きるか。
相手を責める感情が湧いてきます。
実際はパートナーは他の家事でとても疲れてしまっていたのかもしれません。
自分にも落ち度はあるのに自分のことは棚に上げています。
これが自分に都合のいい解釈をしてしまう状態=「箱」に入っている状態です。
ここで最大のポイントは、「箱」に入る発端はパートナーの行動ではなく、自分の感情に背いたことだったという点です。
相手が協力的でないと思っている自分を振り返った時に、
本当にパートナーの行動が発端か?自分を正当化するような感情に陥ってはいないか?
立ち止まって考えてみないといけないなと思う一節です。
3:相手が自分に対して攻撃してくると感じる時
箱の中にいると、自分がひどい目にあったときにこそ、自己正当化の材料を手に入れることができる。
引用:自分の小さな「箱」から脱出する方法 著者/The Arbinger Institute・ 監修者/金森 重樹
例えば友人関係、相手と対立している状態。対立している時はお互い言い分があります。
自分が正しい、相手が間違っているとお互いに思っている。この時は自分も相手も「箱」に入っている状態です。
こんな時、仮に相手が自分の期待する行動をしたとしてもそれを素直に受け取ることができず、相手の落ち度を見つけて否定したくなることはないでしょうか。
これでは関係性は平行線になるでしょう。なぜこんな心理になってしまうのか?
その理由は、自分を正当化するためには「相手に間違っていてもらう」必要があるからです。
不満を感じているはずなのに、実は自己正当化のために、自分が望まない行動を相手がするように仕向けることがある。
この示唆はこの本を読んで一番衝撃を覚えた部分でした。
この状態から抜け出すには、相手を尊重すべき一人の人間であると見なおす必要があります。
自分が「箱」に入っているということ自体に気づくことがとても大事で、気づけた時点で外に出られるということでした。
「箱」の外にいる状態で会える第三者と過ごす時間を増やす事も有効とあり、それも納得でした。
まとめ
自分の今までを振り返ると、「箱」に入って自分を正当化してしまった経験をいくつも思い出せます。
疲れているとき。嫌なことがあったとき。心に余裕が足りないと、相手を思いやる気持ちよりも自分の中の不満や思いが先に出てきてしまったなと。
そんな時、人はいとも簡単に「箱」に入ってしまうものだと知っていれば自分を顧みることができます。
「箱」の存在を知ること。それが自分の行動を変えるきっかけになるはずです。
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